外資系金融オペレーション部門の業務とは?

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最近は昔よりもずいぶんとオペレーション部門に関する情報も日本語で入手可能になりました。

私が当時欧州系投資銀行に勤めていた頃は、採用面接の最中も結局オペレーション部門が担当する具体的な業務内容がわからなかったです。(笑)

新卒採用のリクルーティング活動にも何度か携わらせて頂いたのですが、学生で外資系金融のオペレーション部門が具体的にどういった業務を行っていて、どういう人材を求めているのかを理解している方は非常に稀でした。

そこで、今回は外資系金融オペレーション部門の職務内容や”やりがい”について紹介したいと思います。

そもそもオペレーションとは?

外資系金融と邦銀、また各会社によって呼称は異なりますが、大体は 管理部、業務部、オペレーション部といった呼称であることが多いです。

 よく会社の総務部や財務経理部と混同されることがありますが、(金融機関によって事情はちがうかもしれませんが)オペレーション部門は似て非なるものです。私が所属していた金融機関でも、総務部、人事部、経理部、オペレーションズ部はそれぞれ別組織として構成されていました。

 オペレーション部門は何をしているのか?

では一体オペレーションズ部門とは一体なにをしているかという所ですが、ざっと以下になります。

証券決済

有価証券(⇒つまりお金そのものでなく、お金と交換することのできるもの)の決済(⇒お金との交換)を行います。

プロダクトも、外国株式、国内株式、外国債券、国内債券、上場デリバティブ、店頭デリバティブ・・といった具合に、それぞれに証券決済プロセスが存在し、その数だけ金融機関内で担当チームが存在することになります(チームの大部分はシンガポールオフィスやロンドンオフィスが担当しているなんてことも最近はざらですが)。

詳細は中島真志氏、宿輪純一氏の「証券決済システムのすべて」(少し古いのですが・・)をご参照ください。オペレーション部門勤務者のバイブルですので、一読しておくと採用面接時に非常に効きます! 

資金決済

上記、証券決済で有価証券というものを相手方におくったり、相手方からうけとった際に、その等価となるお金を授受します。また、単純にお金を相手先から受けたり、逆に送ったりします(日本円だけでなく、当然外貨も取扱います)。

日本円の授受は比較的単純な業務なのですが、昨今はAML(アンチマネーロンダリング)対応が非常に厳しいため外貨授受はなかなか複雑ですし専門性(慣れ?)が必要になってきます。

お金の授受なので銀行業務を想像しやすいと思いますが、証券口座でも現金の授受は発生します。会社組織によりますが、社員をダブルハット(銀行行員でもあり証券会社社員という”一人二役(?)”を行うことを法務部より許可された状態。銀行業務、証券業務の双方に携われる)にし証券口座・銀行口座双方の資金決済を担当させるも多いです。

資金決済についても、中島真志氏、宿輪純一氏の「決済システムのすべて」を詳細はご参照ください。こちらもオペレーション部門勤務者のバイブルですので、オペレーション部門でのキャリア構築を考えている方は必読です。

担保管理

金融機関が顧客への融資を実行する際や、顧客と証拠金取引を行う際に、担保として顧客が保有する有価証券を預かることがあります。

そうした担保有価証券の管理を担当します。つまり、担保品の時価(*XX日時点で、この有価証券というものは一体いくらの価値が市場であるのかを示す金額)が、担保として必要な金額分を満たしているかどうかを日々モニタリングし、足りない場合には顧客へ追加担保を請求したりします。

バリュエーション

金融機関内で保有している有価証券の時価情報を管理します。

「そんなのBloomberg端末で確認すれば一目瞭然じゃん」と思うかもしれませんが、金融機関独自のシステムや子会社が時価情報を管理・提供していたり、そもそもBloomberg端末で時価情報がない有価証券(例えば私募債は発行数が極端に少ないため、その有価証券の価格を形成するマーケットが存在しない。よってBloomberg端末に情報が掲載されていない)の時価情報を発行・入手・管理します。

*時価情報が適正かどうかを判断する部署は別に置かれています。オペレーション部門が担当するバリュエーションチームは、担当するシステム内・商品群の時価情報が適切なタイミングで、正しい情報がフィードされ反映されているかを確認することが役割です。

オンボーディング

新規顧客と取引を行うにあたり、その顧客情報の内容を確認・調査・精査します。

特に昨今はAML(アンチマネーロンダリング)が国際的な課題となっていますので、オンボーディングプロセスの重要性は増しています。こうした顧客情報の確認プロセスをKYCプロセス(Know Your Client)と呼称します。

オンボーディング担当はAMLについては勿論のこと、CFT(Counter Financing of Terrorism *つまりテロへの資金提供は締め出そうって取決め)、反社会的勢力チェック、本人確認法、(個人顧客の場合は)戸籍の読み方まで多岐にわたる知識が必要になります。

特に、AML、CFTに関してはグローバルの取組みのため、本社機能や地域事務所との連携が欠かせません。よって英語でのカンファレンスコール、報告書作成、条文や社内ポリシーの読込みが必要になります。

経験豊富なオンボーダーは業界でも限られるので、専門性・市場価値も高いです。

*新卒でいきなり配属されることは稀だと思いますが・・

データマネジメントチーム

新規顧客のオンボーディングプロセス完了後に、その新規顧客情報を実際に社内のシステムに入力・反映する必要があります。データマネジメントはいわゆる新規顧客の口座開設や、口座情報の更新を担当します(顧客情報のみならず有価証券情報の新規登録、情報更新も担当したりします)。

口座開設というと物理的に通帳(ブック)を作るというイメージが大きいと思いますが、金融機関視点からみるとその新規顧客に行内ユニークIDを付与するといったイメージに近いです。

ですので顧客へ行内ユニークID(つまり口座番号)を付与するという作業が肝になりますが、その”付与”という行為も口座の種類(日本円なのか、外貨なのか、銀行口座か、証券口座か、デリバティブ用の口座か、担保用口座か 等)によって異なりますのでなかなか単純にはいきません。

もう一つの重要な作業として、顧客が海外に移住した際に非居住者口座となるのですが、(金融機関にもよりますが)米国在住者の場合は口座解約を課したりと厳しいモニタリングと管理を実行します。金融機関に移住する旨を伝えず、しれっと登録電話番号を変更してきたりする方もいらっしゃるのですが、登録電話番号がどの地域のものなのか定期的に確認し、該当する方へは適切な対応をして頂きます。

レポーディング

 銀行口座や証券口座を保有していると、毎月・四半期・又は年1回送られてくるレポート(残高報告とか、取引報告とか、配当金のお知らせとか、まあ色々な種類があります)を管轄するチームです。私も担当していましたが意外と大変で地味です。笑

こういったレポートも、取引の内容毎に、年に1回とか、毎月1回とか、都度とか、規制でレポート毎に定められています。

最近では、データの作成・管理は金融機関側で実施し、それらレポートデータを印刷し、封入・封緘・発送する作業は外注している金融機関が多いです。 

各種プロジェクト(新ビジネス、規制対応)マネジメント

新ビジネス(新商品やサービス)を立ち上げる際や、新規制に対応する際には、オペレーション部は中心的な役割を果たします。

なぜなら、新事業を計画・発起したりは事業企画部門や事業戦略部門が担当しますし、新規制を策定・通達したりは金融庁等の規制当局が行うのですが、いづれにせそれらを現場に落とし込み日々遂行するのはオペレーション部が担当するからです。

プロジェクトマネジメントはオペレーション部門勤務の醍醐味でもあり、オペレーション部が単なる事務屋さんではないこと(フロントの方の中にはオペレーション部門 / バックオフィスを単なる事務屋さんであると認識し下に見る方も少なくないのですが・・)の一つの証左かと思っています。

実は、オペレーション部門はプロマネスキルを身に着けるにはうってつけの職種です。何故なら、金融では「失敗」は許されないので、プロジェクトの難易度が全般的に高いく、それを英語を駆使し海外オフィスの意思決定者やステークホルダーとせめぎ合いしながら進めて成功に導くからです。

私もプロジェクトメンバーや、プロジェクトマネージャーとして幾つかのプロジェクトに参画させて頂きましたが、非常に自分のビジネススキルを上げることができた経験でしたし、今でも私のレジュメ内のパワーフレーズの一角を形成しています。笑

まとめ 

以上、ざっとオペレーション部門内の業務についてご紹介いたしました。

証券決済と資金決済はその幅が広く、内容もかなり深いため、オペレーション部門の証券決済・資金決済業務にご興味のある方は専門書を読むことをお勧めします。

今回のような各担当業務内容毎の紹介ですと、どうしてもオペレーション部門内の証券決済と資金決済の割合は、部門内でほんの一部のように映るかもしれませんが、実際はオペレーション部門全社員中6~7割の社員は証券決済・資金決済を担当しています。証券決済と資金決済はオペレーション部門内のコアをなす業務です。

オペレーション部門はそのイメージ(事務屋さん)に反して、高い専門性の構築がマストで遣り甲斐のある非常に面白いキャリアだと思っています

AI、ロボティクス、STP(ストレート・スルー・プロセッシング)の導入・浸透・高度化に伴い、オペレーション部門の将来を危ぶむ声があることは確かですが、専門性を高め確立させていくことで、上記テクノロジーの力を取り入れたオペレーショナルモデル構築にPM(プロマネ)やSME(サブジェクト・マター・エキスパート)として携わることもできますし、生き延びる道は必ずあります(*単に事務屋さんとして、ふってくる案件を右から左に淡々と処理する要員としてキャリアを積んでいくと厳しいかもですが・・。これはどの業界にも当てはまることだと思います。やはり常に勉強、向上、転職市場を定点観測が欠かせません)。

 

*オペレーション部門が担当する業務に、アセットマネジメント事業部の投信計理といった業務も存在しますが、筆者が全く詳しくないため割愛しております。笑